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「龍禅~、あんた臼井さんを使って嵌めたわね!」
そう、そこに立っていたのは龍禅だった。
残業をしていた龍禅ならわたしの引っ越しの話は当然聞いていたはずだ。
ここにわたしを住まわせるため、臼井さんにパンフを渡すよう頼んだに違いない。
目の前の龍禅は嬉しそうに顔をほころばせた。
「さっすが美織さん、頭の回転早い」
う~、悔しい! まんまとこいつに嵌められた!
「わたし、解約する! 出ていく!」
「えっ? 解約!? そんな! ちょっと待って下さい!」
わたしが立ち上がると、陽菜ちゃんも立ち上がって必死に引き留めてくれた。初対面だというのに、なんて優しい子なのだろう。
「今、解約なんてしたら違約金が発生するし~、すぐに別の場所を探すなんて無理ですよ。……てか、ふたり……知り合いだったの~?」
楓くんも、わたし達が知り合いだったことに驚いたようで、目を見開いてこちらを見ている。
たしかに引っ越し代だってかなり掛かったし、前のマンションには戻れない。
お財布事情を考えれば今すぐ出ていくというわけにはいかないだろう。
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