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ガタゴトガタゴト……
ガタンッ!……
小石を踏んで荷台が一瞬飛び上がる。
「ん……、ふぁぁ……結構寝てたみたいだな……」
キリは寝ぼけ眼を擦り、ウーンとあくびをしながら伸びをする。
「ふぁぁ……キリ様、もう次の街に着いたのですか?」
口に手を当ててあくびをしながらフロンがキリの懐から顔を出す。
「いや、全然だ、見渡す限り木ばっかりでなーんにもないや。」
今、キリたちは雑木林の道を馬なのか牛なのか、よくわからない生き物が引く荷台に乗っている。
「くっそぉッ!起きたんだったらさっさと離しやがれッ!このトンチキがッ!」
目の前では縄で縛られた少女がギャンギャンと吠え続けている。
「うるせーなぁ、次は猿ぐつわをご所望かい?」
「チッ! このやろう……覚えてやがれよ……」
この言葉遣いの悪い少女と出会ったのは数時間前のことだ
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数時間前
「き、キリ様ぁ……フロンは疲れてしまいましたぁ……」
「な、何言ってんだよ……お前は飛んでるんだから……別に疲れないだろうが……」
「いいえ……飛び続けるのも……結構大変なんですよ……」
なんて、二人でぜえぜえと息を切らしながらノロノロ道を歩いていた。
「次の街まで遠いのはわかってたけど……まさか本当に道中に宿屋も村も無いとは……甘く見てたぜ……」
すると、前の方から何かが走ってくる。
「何だありゃ……立派な角が生えた……馬?」
「ウーマ? よくわかりませんが、あれはダーグリスという生き物です。あ、魔物ではありませんよ! 人間が荷を運ぶ時に使う家畜です」
「ほーん、荷運びのねぇ……。で、なんでそのダーグリスが人も荷も乗せずに走ってくるんだ?」
「おかしいですね、野生のダーグリスでしたら必ず群れで行動するのですが、あの子は一匹のようですね」
「……まさかな、走るぞ!フロン!」
キリは表情をこわばらせ、ダーグリスの来た方に向かって走り出す。
「ちょ、キリ様ぁ!急に走らないでくださいよぉ!あぁ、体が自然と引っ張られるぅ……」
フロンもヨロヨロとそのあとをついていった
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