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「あらら、こんな幼気な少年まで盗賊に身を落とすなんてな、本当に世界は平和なのか疑わしくなってきたな」
そう言いながら、キリは納めかけた斬切を再び抜く。
「へへっ、テメェが他の腰抜け男どもをみんな追い払ってくれたからな、これで好きにやれるってもんだぜ」
少年はそう言うと、懐から短剣を取り出し、盗賊らしからぬ綺麗な構えを見せた。
キリもその構えに違和感を感じつつ構える。
(……斬切、聞こえるか?)
「…………」
キリは心の中で斬切を呼ぶ。
(……なぁ、俺の霊界大和流奥義にお前の能力を合わせることって出来るのか?)
「…………」
(……そうだ、何でも切断する能力じゃなくて、【自分が切りたいものだけを切る能力】の方だ)
「…………」
(……流石だぜ斬切、お前の辞書に不可能の文字はないな)
「…………」
(あぁ、わかってる。全ては俺のイメージ次第ってわけだな。任せておけ)
キリは斬切と話し終えると一度深呼吸した。
そして、少年の目を見る。
「いいぜ、坊や。先に攻撃させてやるよ、どっからでもかかってきな」
「なっ! この野郎!なめやがってぇ!!」
少年は耳まで真っ赤にしつつも、綺麗な構えは崩さずキリに向かって襲いかかる。
(激情しつつも、構えは崩れないか……この子、やはり……)
キリは攻撃を避けつつ、あることを確信した。
(次に、俺がワザと隙を見せれば、この子は必ずあることをしてくる……そこをついてやる )
キリはワザと足を滑らせ偽の隙を見せる。
「っ!! もらった!! くらえ、サンダーランス!!」
少年はその隙を逃さず、短剣に魔法を上乗せして鋭い突きを繰り出した。
が、それは容易く避けられる。
「かかったな、霊界大和流奥義、反撃の型」
キリは少年の突き出した腕を掴み、そのまま刃を突き立てる。
「龍登り」
複数の斬撃が少年の体を下から上へ登る。
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