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フロンが感じたもの、それは
友情、やさしさ、思いやり、勇気、裏切り、憎しみ、悲しみ、儚さ
それらの感情が一気に胸に集まってくる
(あぁ、キリ様……なんて苦しい感情なんでしょう……)
フロンは自分の胸をギュッと抑える。
「義賊がくだらない……だと……」
少女がキリを見上げた表情は激情に駆られていた。
「あの王都を見ても同じセリフが言えんのかよ!! 警備隊も、警察も、誰も助けちゃくれないんだ!! 誰かがやらなくちゃいけないんだ!! それができんのは【私たち】だけだろ!!」
少女は吠える
だが、キリの表情は変わらない。
「ほぅ、俺一人に太刀打ちできないその【私たち】はどうやって王都を変えるんだ? 挙げ句の果てにはみんな逃げちまったじゃねえか。王都に攻め入る前にこうなってよかったな、でなきゃお前らみんなさらし首だったろうよ」
キリの目は依然として冷たい。
「……じゃあどうしろってんだよ、黙って指くわえて見てりゃよかったのかよ……」
少女はがっくりと、うなだれる
「あぁ、義賊なんてものになるよりはよっぽど良かっただろうさ。ところでお嬢ちゃん、王都はこの捨て置かれた荷台の向きの方にあるのかい?」
「お嬢ちゃんじゃねぇ! 私はコロナだ!! 確かに王都はそっちだけど、それが何だってんだ?」
「ちょうどいい、このままお前を王都の親のところまでしょっぴいてやろう」
「な、なんだと……」
「任せてください! こういう時にフロンの出番です!」
少女コロナとキリの話にフロンがここだと言わんばかりに割って入る。
フロンが両手を前に突き出すと
「う、うわ……何だこりゃっ!?」
周りの樹木があっという間に集まり、コロナの手足を縛り上げる。
「おお、フロン! お前魔法使えるんだな!」
「もちろんです! 妖精族は魔法が使える種族ですから!」
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