1日目と2つの嘘

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私が出ると、凛さんはしれっとした表情で『上がっても?』と言った。 答えが決まっているとでも言いたげなその表情に、私はそのまま上げるのが癪で、少し抵抗して見せた。 「あの…今食事中なのですが。こんな時間に何か御用ですか?」 失礼かと思ったが、少し偉そうな態度で出てみた。 「え?3日間僕にくれるって言いましたよね。」 本当に不思議そうな顔をしている。 なんで?とでも言いたげだ。 (いやいや、あんたが連絡しなかったからでしょう―が!) 高圧的に来るかと思えば子供みたいな表情をする。 なんなんだこの生き物は。解剖してやろうか。 「その後、一切連絡も無かったですし…流石に今日はもう無いかと思っていました。 3日間ずっととは考えにくいので、週末の内どこかで会うのかと…。」 「そう…泊まる用意して来たのだけれど。今日は無理?」 「はぁ?!」 私は思いっきり不機嫌な声を出した。 「えー…。またこの荷物持ってこれから家に戻るの?面倒っ…。 とりあえず僕、疲れたので上げて下さい。」 勝手な持論を並べたてるこの男は、なぜ泊めてもらえると思ったのだろうか。 私の貴重な休日を何だと思っているのか。 (言っとくけどなー!私は一人の時間も結構楽しめるんだぞ!! 大人の女は一人の時間も自分を磨くものなんだぞ!) 「言っておきますが、上げても家には泊めませんよ。」 「…はいはい。じゃ上げてはくれるんだね。おじゃましまーす。」 そう言って私の体ごと押し込むように入って来た。 「ちょ、ちょっと散らかってるのに!!」 追いかけて中に入ると立ち止まって荷物を降ろしている。本当に大荷物だ。 「あれ、ご飯食べてる…。」 「まぁ、そりゃそうでしょ。今日来ると思っていなかったし…もう8時過ぎですよ。」 「冷たいな。俺の分も作ってよ。材料は買って来たから。」 そう言うとスーパーの袋をこちらに差し出してきた。
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