38人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の縁飾りが美しい姿見の前で
紺のブレーザーに赤と紺のチェックのスカートを着た少女が笑顔で身仕度をする。
丸っこい目の上にある長い睫毛にビューラーを当てた後、
腰まで届く髪をヘアアイロンで巻き、ウェーブさせ、桜の髪どめを付ける。
「よし!完璧っ☆」
少女がそう言うと同時に、少女の左側の扉が乱暴に開けられる。
紺色のスーツを着た女性は驚いた顔をし、
少女を上から下まで見て深い溜め息をつく。
それでも少女がニコニコ笑っていると、女性は眉をひそめ、どすのきいた声を出す。
「胡桃(くるみ)!!!
あんた、何て格好してるの!?
今日は入学式でしょ!?
入学式の日から髪巻いたり、スカート短くする馬鹿いないわよ!!」
胡桃はスカートの両端をつまんでヒラヒラさせる。
「え~っ、ばれないよ、お母さん。
だって鐘ヶ谷(かねがや)って、校則緩いでしょ?
お姉ちゃんの学年なんて、パーマかけてる人いたじゃん。
なんで私だけ駄目なのよ~」
母は眉をピクピクさせ、咳払いをし、キッと睨む。
「いつもそうやって他人を基準にするんだから・・・
お姉ちゃんは、入学式もきちんとしてたわよ!」
胡桃は負けじと言い返す。
「お母さんだって、お姉ちゃん基準で見てるじゃない!
とにかく私はこの格好で行くから!」
「ちょ、ちょっと!!」
胡桃は母の脇をすり抜け、階段を駆け降りる。
母はそんな胡桃の後を慌てて追いかけていく。
最初のコメントを投稿しよう!