サクラサク

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桜の縁飾りが美しい姿見の前で 紺のブレーザーに赤と紺のチェックのスカートを着た少女が笑顔で身仕度をする。 丸っこい目の上にある長い睫毛にビューラーを当てた後、 腰まで届く髪をヘアアイロンで巻き、ウェーブさせ、桜の髪どめを付ける。 「よし!完璧っ☆」 少女がそう言うと同時に、少女の左側の扉が乱暴に開けられる。 紺色のスーツを着た女性は驚いた顔をし、 少女を上から下まで見て深い溜め息をつく。 それでも少女がニコニコ笑っていると、女性は眉をひそめ、どすのきいた声を出す。 「胡桃(くるみ)!!! あんた、何て格好してるの!? 今日は入学式でしょ!? 入学式の日から髪巻いたり、スカート短くする馬鹿いないわよ!!」 胡桃はスカートの両端をつまんでヒラヒラさせる。 「え~っ、ばれないよ、お母さん。 だって鐘ヶ谷(かねがや)って、校則緩いでしょ? お姉ちゃんの学年なんて、パーマかけてる人いたじゃん。 なんで私だけ駄目なのよ~」 母は眉をピクピクさせ、咳払いをし、キッと睨む。 「いつもそうやって他人を基準にするんだから・・・ お姉ちゃんは、入学式もきちんとしてたわよ!」 胡桃は負けじと言い返す。 「お母さんだって、お姉ちゃん基準で見てるじゃない! とにかく私はこの格好で行くから!」 「ちょ、ちょっと!!」 胡桃は母の脇をすり抜け、階段を駆け降りる。 母はそんな胡桃の後を慌てて追いかけていく。
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