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鬼の形相で追いかける母をまくために
胡桃は脱兎の如く、高校まで続く一本道を走り抜ける。
真っ白に輝く校舎が視界に入る時、
胡桃は振り返ったが、母はいなかった。
どうやら上手く切り抜けられたようだ。
胡桃はゆっくり歩きながら息を整えていく。
不意に後ろから誰かに肩をギュッと掴まれ、
胡桃は飛び上がりそうになるくらい驚いた。
胡桃の後ろにいたのは、小学生の時からの友人だった。
友人は二つに束ねた黒髪を揺らしながら、
胡桃を凝視する。
胡桃は友人の視線にいらついた様子で言う。
「文香(ふみか)、何か言いたげね。
何なの!?」
文香は目を泳がせ、ボソッと言う。
「・・・いや、だって、気合い入ってるなと思って・・・
何て言えば良いか分からないけど・・・
可愛いよ、多分・・・うん」
目を合わせない文香に胡桃は目を細め、疑いの眼差しを向ける。
胡桃の視線に文香が焦っていると、後ろから元気な声が聞こえてきた。
文香が振り返ると、声の主はすぐに気づき、笑顔で手を振る。
「おっはよー!
おっ、皆いるじゃん!
わぁー、胡桃可愛い♪♪」
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