38人が本棚に入れています
本棚に追加
胡桃も手を振り、文香と二人で駆け寄る。
「鈴菜(すずな)!
鈴菜もイメチェン!?
髪の雰囲気違ーう!」
鈴菜は自慢気にボブヘアーを指で触りながらニヤリと笑う。
「分かった!?
春休みについにストパーデビューですよ♪」
さらさらとして陽光に輝く鈴菜の黒髪を
文香はうっとりと見つめながらも、少し暗い顔をする。
「二人とも綺麗になったけど・・・・・
大丈夫かな・・・?
ここ、校則緩いって聞いたけど、入学式からそんな感じにしたら、先生に目つけられるんじゃ・・・?」
鈴菜は文香の肩をどーんと叩いて笑う。
「もう!真面目過ぎるんだから、文香は!!
入学生見たって、文香みたいな子、少ないじゃん!
あっ、でも胡桃のは、ちょっと目立ち過ぎるかも。
可愛いけど、遠くからみたら、花挿してるように見えたし」
胡桃は桜の髪留めを撫でながら横目で見る。
「・・・そうかなあ?
入学式だし、華やかで良いかと思ったんだけど・・・
でもこのくらいしないと、運命の恋ってゲット出来ないでしょ!?」
「運命??」
文香と鈴菜が同時に首を傾げると、胡桃は目を爛々と輝かせる。
「そうよ、運命!
私は恋も勝ち取るの!!
衝撃的な出会いだとすごく良いわ!!
木の上からどーんと落ちてきてキスしちゃったり、
廊下の角を曲がろうとしてぶつかって一目惚れしちゃったり、
満員電車の中で電車が揺れてキャッて抱き合っちゃったり~
そういう些細なきっかけから発展する恋愛がしたいのよね~♪」
文香と鈴菜は互いに顔を見合わせた。
生き生きとした表情で熱く語る胡桃に掛ける言葉が見つからない。
だが無言も良くないと思い、文香は遠慮がちに言う。
「・・・確かに衝撃だね。
・・・何かイタイ・・・じゃなくて、大恋愛になってそう・・・」
「・・・胡桃ってさ、そういうの、理想なの・・・? 」
鈴菜の問いに胡桃は笑いながらくるくる回る。
「そうだよ♪
これぞ運命って思える瞬間から恋が始まるの!!
さあ、早くカッコいい人見つけよう♪」
文香は、ぴょんと跳ねる胡桃を見ながら心配そうに言う。
「・・・あのさ、もし、あのこと
気にしてそんなこと考えだしたんなら・・・」
文香の発言は胡桃の黄色い声にかき消される。
最初のコメントを投稿しよう!