第1章 プロローグ

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「便利屋・榊」 第2話 悠  さて、シャワーして仕事の準備しないと。もうちょっと寝てたいとこだけど、皆がそろそろやって来る。 「母さん、悠も起きた?」 「あら、あんた聞いてないの?悠、お友達のとこ泊まるって、帰ってこなかったわよ。」 「あの子また?オタクめ・・週末に頼みたいことがあったのに。携帯切ってたから着信気づかなかったわ。まったく・・」 すると、母はニヤニヤしながらも早くしなさいと、台所に戻っていった。 まあこんな調子で、シングルマザーの私を、助けてくれる母には感謝しているが、どうも孫の悠に関しては甘すぎる。 大学に入ったばかりだってのに、まじめに勉強してるのか、いっそ一人暮らししてくれたらいいのに、コンピューターオタクのあの子は、部屋じゃPCを何台も置いてこもりきり、週末にはPC仲間と集まって、何とかって妙なプログラムを作っているらしい。 たまには私の便利屋としての仕事を、手伝ってくれたらいいのに。 親の気も知らず、男手がないと困るだろ?なんて、調子の良いこと言ってるんだから。 25歳の時、この子を一人で産んでから、実家に戻ってその1室で便利屋の事務所を始めてから、最初はペットの散歩や買い物代行、お年寄りの話し相手になったり、ごみ屋敷を掃除に行ったり、ありとあらゆることをやってきた。 出産前は、探偵事務所の調査員をしていたこともあって、そっち関係の仕事も評判になり、今では浮気調査や、恋人代行、別れさせ屋などの派遣事業や、ケータリング業も委託で行っている。  父が亡くなってから、敷地内に小さな事務所を建て、従業員は7人。 毎日、忙しく飛び回っている。 従業員ができたからって、机仕事なんて性に合わないから、私も自ら便利屋家業をこなしている。  40半ば過ぎの榊薫。 今日も誰か困っている人がいる限り、どこでも駆けつけて助ける。 そう思って、頑張っていくつもり。 母と、息子の悠、猫のななこの為にね・・ image=478317541.jpg
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