第1章 プロローグ

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「便利屋・榊」第3話 夜逃げ屋  今夜も雨が降っている。 ルートの確認をしながら、薫は 電話を待っていた。 今夜は夜逃げの仕事が1本、DV絡みの脱出で、酒乱の夫から奥さんと6歳の男の子を県外に逃がすのだ。 痣だらけの奥さんが会社に依頼に来た際は、つい情に駆られて感情的になるのを、抑えなければ・・と思ったものだ。 殴られても、蹴られても、ごめんよ・・と朝になると謝ってくる夫を許し、契約もキャンセルしようとする奥さんを、何度も説得した。 このままじゃ、子供だって大怪我をする。いつか変わるんじゃないかって、そんなこと言ってたら殺される。 とにかく、逃げなさい。跡形もなく、消えるんです。 そう言って説得してきた彼女が、うまく夜逃げ出来たか。なかなか完了の報告が入らないことに、不安が募る。 夫の方を、今夜誘い込んだ可奈からは、しっかり酔いつぶしました。と、すでに報告が入っている。 元高級クラブホステスだった可奈は、この手の仕事の手際は完璧だ。エキゾチックな容姿でモデル並みの彼女に、落ちない男はいない。 ・・・ん?着信だ。 「もしもし、亮、完璧?良かった・・彼女と息子さんは・・そう良かった。 準備したマンションは大丈夫?・・OK。じゃ、気をつけて戻って来なさいよ。お疲れ」 報告を受けながら、薫は何だか、自分と息子の悠のことを思い出していた。 雨のせいね・・きっと。 image=478289526.jpg
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