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ぱたん、と扉が閉じる音で悠葵(ゆうき)は起きた。
「ん……」
本棚に凭れて寝ていたから背中が痛い。うぅん、と唸りながら悠葵は背伸びをした。
「……あ、わりぃ月野(つきの)。起こした?」
「や、別にだいじょぶ」
悠葵は欠伸混じりに本棚の向こうから聞こえた榊原冬臣(さかきばら ふゆおみ)の声に答えた。ついでに乱れていた三編みをほどいて手櫛で整える。
さらり、と枯れ草を思わせる色合いの長い髪が床に広がる。
「マジで悪い―――ってなんで髪ほどいているんだよ!?」
何故か本棚から出てきてまた本棚に隠れた冬臣をきょとんと見ながら、悠葵は三編みを編み始める。
「本棚に凭れていたからぼさぼささ。ったく、なんで女に産まれたかな。こんな長い髪、必要ないって言うのに」
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