第1話

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駅で止まるたびに高校生たちが走って電車に乗り込んでくる。 私と先輩が座っている席は扉に一番近い席だから、高校生が乗り込んでくるたびに冷たい風が来てイライラしていた。 「そういえば、先輩ってどの駅で降りるんですか?」 「花屋敷。」 「え、」 え、花屋敷って。 通りすぎたんだけど…。 「先輩、花屋敷通りすぎましたよ?」 「しってる。」 「え、えええ…」 先輩はそんなことどうでもいいように黙って携帯のアプリで遊んでいる。 この人、ばかなのか… 私は呆れて先輩を見ていたら、駅員さんが「次は、椎路です」と言うと、3分もしないうちに椎路についた。 「先輩、私この駅で降りますね。」 私がそう言うと、先輩も一緒に立ち上がって、私より先に電車を降りた。 「え、ちょ」 「マフラー。」 「え?あ、マフラー。」 私は借りていたマフラーを先輩に渡そうとすると 「それ、家についたら返してもらうから。送ってくわ。」 先輩はそう言って、改札口を出た。
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