972人が本棚に入れています
本棚に追加
第26話 真意
新しい週が始まり、いつもどおり忙しい日々が過ぎて行った。
水曜日の午後。
会議が終わってフロアに戻ったところで、臼井さんに声を掛けられた。
「先輩、丁度良かった。主任のハンコが欲しいんですけど、先輩が押してもらえませんか?」
「え? どうして?」
主任の席に目を向ければ、海斗の姿はない。
そういえば打ち合わせで社外に出ていたかもしれない。
「急ぎで承認印をいただきたいんですけど、主任、今日は戻りが未定らしくて。電話を掛けたらこちらで判を押して構わないって言われて……」
「だったら押せばいいじゃない」
「どこにハンコがあるかわからなくて」
海斗の席は決して汚れているわけではないけれど、とにかく書類の数が多い。
手を出しにくい雰囲気があるのは事実だった。
最初のコメントを投稿しよう!