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「ねぇ、暑いわ」
7月下旬、茹だるような暑さの中「伊呂波みかん」が呟く。
「仕方ないだろ」
「あんたの部屋なんでクーラーないのよ」
「金がないんだよ」
「じゃあアイス買ってきてよ」
「さっき食べたばかりだろ」
しかもこの暑い中往復20分もかかるコンビニまで買いにいったのはこの僕だ。「足りないわ」
「僕のまで食べたくせに」「私が足りないっていってるんだからはやく買ってきなさいよ」
「なんだよ偉そうに」
「だって本当に偉いもん、なんたって私神様だし?」そう、こんなちっこくて小学生みたいな見た目でもこいつは神様なのだ。
「神様ならアイスくらいだせるだろ」
「無理に決まってるでしょ?私は縁結びの神様なのよ?」
「年中ろくに仕事しないくせに」「してるわよ!」
「じゃあ今月の成果は?」「、、、せ、先月は一組くっつけたし!」
「あれは伊呂波がいなくてもそのうちくっついてたろ」
「そんなことないわよ!私のおかげよ!」
伊呂波が顔を真っ赤にして僕に殴りかかってくる。手がぷにぷにだから全然痛くない。
「わかったからあんまり騒ぐなよ、よけい暑くなるだろ」
「あんたのせいよ!だからはやくアイス買ってきなさい!」
「なんで僕のせいなんだ、、」僕はため息をひとつついた。「わかったよ、僕も食べたいし、何がいいんだ?」途端に伊呂波は笑顔になった「昨日食べたみかん味のやつ!」
「はいよ」
「あんたってなんだかんだ私に甘いわよねぇ」
「うるさい」
好きな人には誰だって甘くなるさ。
あ、人じゃなくて神様か。
僕と伊呂波の初めての出会いは近所の寂れた神社だった。
たしか春の終わりごろだったと思う。
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