突然の連絡

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「はい、月島です」 俺は耳にイヤホンを突っ込んだ。 一日の大半電話をしているのでこれなしだと何もできない。 「…今日の件ですね?…はい、僕も立ち会いますから心配しないでください。…はい、実印と免許証を忘れずにお願いします」 電話の向こうに話しながら、焼けたトーストにバターを塗り、インスタントのコーヒーを淹れて椅子に座った。 「…はい、では10時に。いえ、とんでもないです。…はい、失礼します」 電話が終わると耳からイヤホンを外してテーブルに転がした。 今日、立ち会うことになっている不動産売買の買主だ。 人生で最も大きな買い物ともいえる取引に、気持ちが逸っているのだろう。
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