第41話 本名

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第41話 本名

 夜になり、凌生との待ち合わせ場所である本屋に来ていた。  オフィス街にある本屋はビジネス書が充実している。  無意識に経済書の棚の前に立っていた。  海外の雑誌に目を走らせる。  ネクストテクノロジーについて書かれている雑誌に手を伸ばしかけたところで、声を掛けられた。  反射的にその手を引っ込める。 「何かいいのあった?」  凌生はわたしが取ろうとしていた雑誌に目を走らせた。 「ううん、特には……それより、あのね、わたし凌生に……」 「あー、腹減ったー」  わたしの言葉を遮り、くるりと背を向けると、凌生は早足で店を出ていく。  慌ててその後ろを追いかけた。 「待って、凌生、きちんと話したいことがあるの」 「…………」  外はもう暗くなっていた。  石畳の広いパテオには等間隔に楠が植えられ、優しい葉音を奏でている。  時計のオブジェが夜七時を知らせる音楽を流していた。
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