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「支えられて、か」
キズナがそう呟いたとき、ふと脳裏に1人の人物が浮き上がった。
顔はぼやけて見えないが……セミロングの黒髪を持つ、セーラー服姿の女の子。
彼女は、こちらを向きながら優しく頷いている。誰かの愚痴でも聞いてくれているかのように。
次の瞬間、キズナの意識はすぐに現実に引き戻された。
ーーなに?今の映像は。
そんなキズナの疑問を、ツキの甲高い声が打ち消した。
「だからー、求め合って支えを見つけたとき、ヒトは初めて強くなれるんだよ!」
死神からの受け売りを並べ終えたツキは、誇らしげに胸を張っていた。まるで、全て自分で考えたかのような得意げな顔だ。
「そっか。いつか、分かるときが来るかな? 私にも」
キズナが空を見上げた時、突然ツキが叫んだ。
「キズナ!すごい速さで霊が近付いてくる!」
ツキが尻尾を立てながら周りを見渡した。その次の瞬間、目の前に1人の男性が現れた。
男性はキズナに背を向けて立っていたため、キズナの存在には気付いていないようだ。
ツキが尻尾から得た霊の情報をキズナに耳打ちした直後、先程の男性が呟いた。
「ここは、俺があいつと……でも、なんでここに?」
「魂がここを望んだからよ」
キズナが男性を見つめながら答えた。
その声に飛び上がった男性は振り返り、怪訝そうな目を向けた。
しかし、キズナはその視線にかまうことなく話を続ける。
「天に向かえない場合、魂は強く望んだ場所に移動する。例えば、思い出の場所や大切な人の元へ、ね」
男性は呆然とキズナを見つめ、口を半開きにしたまま立ち尽くしていた。
「死神……?」
キズナの容姿を見て、そう考えたのだろう。しかし、キズナは小さく首を振る。
「違うわ。私は、単なる死者よ。ただ、"未練切り"の役目を与えられているだけ。死を統率する死神様からね」
堅い表情をしていたキズナが笑いかけ、ジャングルジムを離れて男性の前に着地した。
「はじめまして、松永 弘樹(まつなが ひろき)さん。私は、死神様の使い……魂の仕分け人。名は、キズナ」
――この男性も、大切な何かを残して望まぬ死を迎えたのだろうか。
未練の鎖に縛られ、天に向かえない憐れな魂達。
私が守るの。もうこれ以上、悲しい結末を辿る魂は見たくないから。
これが私が出来る唯一の償い。
彼等が心安らかに天に還れる、その日まで。
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