782人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんた、キモイよ。何が体の相性だよ。このスケベ女が!」
「だってー、本当に相性がいいんだもん。男と女の関係に、体の相性って重要じゃん。 本当に相性がいい相手とのエッチって、受け入れた瞬間に体に電気が走るんだよ。唯はそういう相手に出会ったことある?」
「んー・・・確かに相性はあると思うけど。そこまでの人には会った事ないかな。びっくりするくらいに合わない人はいたけど」
「はははっ!分かるわぁー。あれって何だろね。上手い下手関係ないもんね。いやーエッチとは奥深いものよ」
他のお客が帰宅した事をいいことに、手を叩きくだらない話ではしゃぐ二人。
店の主人はお皿を拭きながら、恥じらいを失った女達の話を聞き白い髭を揺らし笑っていた。
「綾子・・・そうやって綾子が笑ってるから安心してるけど、相手に振り回されるだけの恋愛はやめてね・・・」
突然唯がポツリと呟く。
「えっ?やだ、この私が振り回される訳ないじゃんか」
卵の黄身を突っつく箸の動きを止めて、戸惑いながらも目を細めて笑顔を見せる。
「そうか、ならいいんだけど。あ、そうだ、綾子合コン行かない?って言うか、私の代わりに行って欲しいの。頭数揃えるためにミチルに頼まれたんだけど・・・ほら、私合コン苦手だし。直人にも悪いからさ」
唯は、両手を合わせ『お願い』と軽く頭を下げた。
直人とは、唯が三ヶ月前から付き合っている彼だ。
私と唯が時々顔を出すバーに常連客として出入りしている、製薬会社で勤務する営業マン。
何度も顔を合わせているうちに意気投合し、お互いに「いいなー」と思う状況で、付き合う付き合わないの話しになる前に・・・つまりはやってしまったらしい。
好きな気持ちを育む前に体を重ねる。
この年になると珍しくもない恋の始まりだ。
始まりはどうであれ幸い彼とは仲良くやってるらしい。
「合コンねー、嫌だ。めんどい。私だって合コン嫌いなの知ってるじゃんか」
「パスパス!」と手を横に振り、再び箸の動きを進めた。
最初のコメントを投稿しよう!