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唯と松波さんのはじめましての挨拶が終了し、私は松波さんが部屋に入るのを見送った。
そして、申し送り用紙と診察券、朝イチに実施する予定の抗生剤の点滴、その他諸々の引っ越しセットが入った手提げ袋を肩に掛け、一足先にステーションに入った。
「誰もいないんだ・・・他のスタッフは巡視かな?」
モニターの心拍音と、電子カルテの微かな起動音だけがステーションに響き渡る。
私は、カウンターテーブルに置かれた数冊の医学書を横にずらし、肩に掛けていた袋を置いた。
そこにある丸椅子に腰掛け、引き渡す申し送り用紙を確認する。
「松波さんの明日の予定は・・・朝イチの採血と点滴があって、午前中に全腹部のCTがあって、・・・あれ?採血のラベルって発行してあるっけ?・・・まぁいっか。唯にオーダー画面確認してもらおっと」
ボールペンを紙に走らせ、ぶつぶつと独り言をいう。
「それにしても、申し送りの相手が唯で良かったー」
深く息を吸い込み、息を吐くのと同時に大きく背伸びをした。
「ちょっと、なに人の病棟でくつろいでんのよ」
「えっ!?」
背後から聞こえた声に驚き、飛び上がるように後ろを振り返った。
「びっくりしたー。唯か。この病棟落ち着いてるね、羨ましい」
「全然落ち着いてないって。今やっと落ち着いたんだって。じゃなきゃ、準夜の私がこんな時間まで残ってない!」
私が差し出す申し送り用紙を受けとりながら、唯は不満そうに口を尖らせた。
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