ホントノキモチ

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私は、急いで病棟に戻ると、深夜勤スタッフに挨拶して病棟を去る。 エレベーターの横に あるうす暗い階段を、足音をひそめ一歩一歩下りていく。 二階に辿り着くと階段から離れ廊下に顔を出した。 階段から出て左に続く廊下の突き当たりにはオペ室がある。 ・・・オペ室に灯り無しか。最後のオペに入るって言ってたけど、もう家に帰ってるのかな・・・。 大きなため息を落とし、再び一階に向かって階段を下り始めた。 コツン・・・コツン・・・コツン・・ 靴の小さな踵の音が、7階に伸びる筒抜けの天井と壁に跳ね返り耳に響いている。 「・・・」 歩く速度を緩め、鞄の中の携帯を取りだした。 新しい着信履歴・・・無し。 「連絡なし・・・か。自分から連絡するって言ったのに・・・嘘つき」 携帯を握りしめ、苛立ちと淋しさで押しつぶされそうな心を抑え込もうと、きつく唇を噛んだ。 鞄に携帯を押し込み、一階の渡り廊下まで一気に駆け下りる。 職員出入口の自動ドアが開かれたと同時に、ジメジメした外気が纏わりついた。 駐車場の横に広がる林からは、木々のざわめきと共に鈴虫の歌声が聞こえてくる。 「昼間は蝉で夜は鈴虫?もう!虫ってホント煩い!」  行き場のないため息をつき、耳を塞いでそのまま明かりの灯る寮まで走り出した。 病院の敷地内にある7階建てのワンルームマンション。 看護師と医師の独身寮であるこの5階に私の部屋がある。  玄関に入った私は、いつもの様に玄関で白衣を脱ぎ、下駄箱の下にある籠に白衣とストッキングを投げ入れた。 下着姿で壁にあるエアコンのスイッチを入れ、そのままお風呂へと向かった。
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