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「はい、お姉さん。今日のは味が染みてまた美味しいよー」
顎髭を生やした店の主人が、湯気の立つ器をカウンターの上に差し出した。
「うわぉ!色に染まった大根、美味しそう!」
私は陶器を両手で包み込むように受け取り、歓喜の声を弾ませた。
「いつも思うんだけど、それだけ食べて何で太らないの?なんか腹立つわー」
とろとろ大根に箸を沈ませる私を見ながら、唯がぷくっと頬を膨らませた。
「んー、腹に虫でもいるんかな。あっ、胃下垂だわ、胃下垂!」
うす茶色に染まった大根に息を吹きかけ、嬉しそうにパクリと口に入れた。
「胃下垂ってあんた・・・あ、そう言えば昼間二階の廊下で結城先生とすれ違ったよ。オペ室に向かう途中だったのかな」
「ふーん・・・。偉そうに颯爽と白衣なびかせてた?」
「うん!なびかせてた。風切ってたよ。体格いいから歩いてると目立つ人だよね」
「結構、筋肉質だからね。肩幅あるから余計に大きく見えるんだよ」
頬杖をついたまま、手持無沙汰に摘まんだ枝豆を指でくるくる回し声を落とす。
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