彼女の存在

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「じゃ!俺行ってくるわ」 珈琲を半分飲み煙草を吸い終わった彼は急いで玄関へと向かった。     「うん。ラパコレ頑張ってね。モニターを赤か黒に染めないようにね」     「おまえなぁ、誰に言っとんの?俺がラパコレして開腹に変更した事ないんだぞ!」     オペ室勤務の同期の友人から聞いた話だが、ラパコレはモニターを見ながらオペを進めて行く。 下手なドクターがラパコレをすると、出血してモニターが赤く染まるか、止血が上手く出来ず血管を何ヵ所か焼くために黒く染まる。    オペ室ナース達はモニターを見ながら 「今日は赤いねぇ~」 「今日は黒いねぇ」 と呆れながら会話をするらしい。   もちろん手技だけの問題ではないが、 腹腔鏡では対応できないと判断されると、途中で開腹手術に切り替える事があると聞く。       「分かってるって。和馬は天才外科医だからね」   玄関に向かう彼の後を追いながらクスッと笑う。     「今日は午後もオペ入るから帰り遅くなる。綾子は?夜来る?」     「今日はやめとく。準夜終わったらそのまま寮で寝る」
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