プロローグ 人類が滅びた後の地球にて

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決断すれば、後は行動するだけだった。 『魔法』で魔剣を呼び出す。 ブゥウウン、と振動音を鳴らす魔法で強化された剣を引っ提げ、ヴァイリは悠然と歩を進める。 哀れな獲物は崩れかけのビルの中へ逃げたようだ。そこで罠にかけるつもりなのか、逃亡のための目眩ましなのか。 (魔女だか何だか知らないが、貴様が『魔法と呼べないほどの異常』を使えるのはわかっている。おそらく定期的にアースバーンと地球を『穴』で繋ぐことで流れ込んだ『マナ』を利用してるんだな) 異世界にはマナというものが存在する。 空気中に拡散しているマナを摂取してきたアースバーン人は長い年月をかけてマナを材料に魔法を扱えるようになった。 おそらくは地球人にも似たようなことが起こったのだろう。 いや、いくらなんでも早すぎる点を鑑みると、無茶を通すため人体を弄くったのか? (まぁなんでもいい。奴等がウイルスに汚染されれば厄介だ。その前に肉片一つ残さず消滅しとくか) 女が逃げ込んだビルの前でヴァイリは立ち止まる。 魔剣を振り上げ、一言。 「相手が悪かったな」 キュィイイイイン!! と魔剣が掌から溢れる『魔力』を吸収する。 『マナ』のままでは魔法は大した威力を発揮しない。 体内で濃質な『魔力』に変えてこそ、威力や現象が変化するのだ。 つまり。 魔法とはどれだけ強力な魔力を生み出せるかが重要で唯一の項目なのだ。 マナをそのまま使っている魔女ごときに抗えるものではない。 「クライシス・デストラクション」 呟き、魔剣が振り下ろされる。 刀身より迸る魔力の奔流が巨大な刃を形作り、数十メートルの魔法と化す。 それはビルだけでなく、ここら一帯を破壊するに十分な力を宿していた。 だからビルごと魔女は消滅するはずだった。 刃の正面を覆うように青の光が出現したが、魔法とさえ呼べない異常ではクライシス・デストラクションを防げるはずがなかった。 だが。 結果は異常を示す。 ッッザン!!!! と。 ヴァイリの横腹を右から飛来した刃の切っ先が斬り裂いた。 「…………っ。は?」 胴を斬り裂かれ、千切れそうで千切れない状態でヴァイリの上半身は後ろへのけ反るように倒れた。 そこで彼は目撃する。 クライシス・デストラクションが彼の左に広がる廃墟を消し飛ばしたのを。 そして。 彼の右に輝く帯状の青の光を。
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