4人が本棚に入れています
本棚に追加
青に包まれた視界が晴れる。
その時には四方を金属で囲んだ、無骨な部屋に立っていた。
『魔人』の一人であるジンは右手をぷらぷらと振っていた。
ぶじゅべじゅと粘着質な音が鳴り、三本指の赤黒い手は、五本指の人『のような』手へと変わっていた。
「相変わらず気味悪い擬態能力だぜ」
吐き捨て、両手を隠すようにズボンのポケットに突っ込んだジンはモーガンへ向き直る。
「で? 最近の作戦はなんの意味があったんだ? わざわざ偵察でしかない雑魚と遊び気分の騎士をブッ殺したのは」
「日本、アメリカ、イタリア。これらで私たちはゲリラのように戦闘を繰り返してきたわね? そうすれば敵は『この近くに新手どもがいる』って勘違いする、はず」
「なーんで自信なさげなんだよ」
「とっ、とにかく! 敵が気合い入れて捜索する前に『怪しいポイント』をそれとなーく提示すれば、他の場所を捜索されることもない。日本、アメリカ、イタリアなんかとはまったく関係ない秘密基地が見つかる確率が下がる、はず」
「だからなんで自信なさげなんだっての」
「でもあからさまに特定のポイントだけを守るのは不自然だから『デゴイとして出撃したな』と見えるように他のポイントも守れば完璧……だといいなぁ」
「ネガティブすぎだぞオイ」
まぁいい、とジンは呟き、扉へと歩いていく。
モーガンへ背を向けた状態で、なんでもない調子で言う。
「とにかく敵を殺しゃいいんだろ。そうすればここは『安全圏』だ。ウイルスや異世界人や殲滅兵器に怯える心配もなくなるしな。張り切って殺ってやろうぜ。変態科学者のせいで手に入れた、くだらねえ力でさ」
「…………言っておくけど私たちは一つの勢力にだって対抗できないから。そこのところを忘れないように」
「わーってるっつーの」
「ふっふっふぅ。頑張っていくデース!!」
「……はぁ。不安すぎる」
二二二二年二月二二日、二時二二分━━━通称『二の日』に人類は滅亡した。
しかし、密かに人の枠を越えた者たちは未だ死んではいなかった。
人類が地球を支配していた時代は終わり。
これより新たな生命体による闘争が始まることとなる。
二二二二年四月一日。
この日はコソコソと活動していた彼らが真正面から三勢力へ喧嘩を売った日だった。
これは新たな始まり。
終わりから続くプロローグ。
最初のコメントを投稿しよう!