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「う、うわぁああああああん!! ごめんなさぃいいいいっ!!」
(うおおおッ!? ちょっ、なんで泣いて……ッ!?)
テンパったジンは両手を意味なく動かしているのだが、それがみほちゃんには凄く怒っているように見えた。
「わああああああああんっ!! もうしないからぁああああ!!」
「い、いやいや! 待てって。俺そんなに短気じゃねえぞ? つーかぶつかるくらいならいくらだってしていいって。な? ほら、ばっちこい!!」
なぜか胸をバーン!! と叩くジン。
確実に進む方向を間違えているが、指摘する者はいなかった。
泣き止む気配がまっったくないことを察したジンはわたわたと左右を意味なく見渡し、コナクソーとか叫びながら、みほちゃんの両脇に手を差し入れて、持ち上げた。
「うわっ」
びっくりしたのか、ポカンとジンを見つめるみほちゃんへ、ノリでこんなことをしたアホは『ははは……』と乾いた笑みを見せた。
「た、高い高ーい……?」
苦しいか? と内心焦っていたが、これで再度泣かれたら確実に犯罪者のレッテルを張られるはず。
「…………変な人」
「ぶほっ。いや、まぁこれだけ見ればそうかもしれんが、これでも化け物を千切っては食べ千切っては食べと結構凄いんだぜ……?」
「ほんとう? じゃあお母さんといっしょだ! あのねあのね、わたしのお母さんも悪いばけものをやっつけてるんだよっ」
「知ってるぞ。なんせ共闘した仲だしな」
「ほんとう!?」
「おうよ。みほちゃんのお母さんはすっごーく強かったぜ」
喋りながら『良かった泣き止んだ』と安堵の息を吐くジン。
一〇メートル級のガンマ一八体に囲まれた時より心臓が暴れていた。
「ねえねえっ。お母さんのこともっときかせてっ。わたし、みんなを守るためにがんばってるお母さんのこと、なにも知らないから……」
「ん。ま、まぁ、オブラートさんを動員しなきゃだが」
「オブラートさん?」
無邪気に首をかしげるみほちゃんには悪いが、馬鹿正直に血生臭い死闘を話すわけにもいかないだろう。
「よしっ。俺がお母さんの活躍を語ってやるぞッ。そらっ!!」
だんっ!! と衝撃がみほちゃんを傷つけないように調整しながら猛スピードで通路を爆走するジン。
やり過ぎたかとも思ったが『わー。すごいすごいっ』と喜んでいるし、心配ないだろう。
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