終章 人類最後の昼下がり

5/5
前へ
/40ページ
次へ
「出来損ないの子孫は消すことにしちゃったから」 その言葉が松海の鼓膜を刺激した直後の出来事だった。 ドロリ、と。 彼女の体が氷のように溶けていく。 荒川松海が最後に感じたのは死んでしまう絶望でも、溶解による激痛でもなく。 圧倒的なまでの快感だった。 絶対的な『力』による喪失が不可解なまでの悦楽へと変貌したのだ。 二二二二年二月二二日。 午後二時二二分の昼下がり。 世界中で死力を振り絞って生きていた人間は快感と共に消失した。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加