4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ハハハッ!! 弱い、弱さが炸裂してるぞ!!」
そう叫ぶ間にも触手はウルフを殺戮していく。
一五いたウルフはすでに六にまで数を減らし、羽虫型アルファは触手に触れた先から捕食されるように触手の中へ呑み込まれ、すでに全滅していた。
その現象を眺め、ガンマが不快そうに足を踏み出す。
ズシン……ッ!! とそれだけでひび割れたアスファルトが不気味な震動を伝える。
「おーおー。今度はてめえか。舐めてるよなあ。てめえごときが『魔人』高槻ジンに立ち向かえるって姿勢が完全に舐めきってやがる」
ズルッとウルフの死体から『右手』を引き抜き、シュルシュルとコンセントを収納するように戻していく。
ブジュと水っぽい音と共に、爆発した右手の位置へ三本指の異形が収まる。
「貴様、どっちの兵隊だ?」
「おいおい。まさか俺らが異世界だとか古の大陸だとかからやって来たヘンテコだって思ってるんじゃないだろうな。だとすりゃふざけるにも程があるぜ、化け物」
不敵な笑みがその趣を変える。
明確な殺意を宿し、少年は左手をガンマへと向ける。
それは『手』だった。
ギラギラとあやしく光る漆黒の五本指の『手』を開閉しながら、少年は宣言する。
「人類の成れの果てが俺らだ。てめえらが食い漁ってたもんが俺らだ。だが、これからは逆だ。てめえらが! 俺らに! 喰らい尽くされる番なんだよッッ!!」
振り下ろされるガンマの強大な拳を少年の『手』は受け止めるように大きく開く。
それだけだった。
それで十分だった。
衝撃波が吹き荒れ、バキボリぐじゃべちゃと何かを噛み砕く音が廃墟と化した東京に木霊した。
すでに勝敗は決していた。
最初のコメントを投稿しよう!