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アメリカ・ラスベガスにて。
とあるカジノの一角で一人の男がスロット台の前に立っていた。
街は廃墟と化しているのだが、男が『地球の娯楽を楽しみたい』と望んだから、このカジノは無傷で済んでいた。
スロットが『七七七』で止まり、大量のコインを吐き出す。
それを無感動な目で見ていた黄土色の髪の男はつまらなさそうに息を吐く。
「飽きた。消すか」
たった二言。それで十分だった。
横にどけていた椅子を蹴飛ばし、指を鳴らす。それだけで外に控えた部下がやって来る……はずだった。
「…………? アイツら、なにチンタラしてるんだ? もういい。殺すか」
何ともなしに呟き、黄土色の髪の男はカジノの外に出る。
そこには数十人のアースバーン人が巨人に握り潰されたかのように『丸く』なっていた。
体液という体液が路上に撒き散らされ、鼻につく嫌な臭いを放っていた。 死体と一緒に心臓が死体の数だけ転がっている点が少々不可解だったりする。
そんなグロテスクな場所に一人の女が佇んでいた。
膝まで伸びる金髪を後ろで纏めた二十歳前後の女性だった。
腰には二本の刀を刺し、青を基調とした楓の花をあしらった着物を血で真っ赤に染めた女はペロッと頬に付着した赤い液体を舐め取る。
「待ってたわよ。異世界アースバーンの絶対帝国第八騎士団騎士団長ヴァイリ=フォースガーナ」
「人間……いや、地球人に第八騎士団を俺に気づかれることなく壊滅するほどの力はないはす……。何者だ?」
「魔女。貴方たちのせいで人を捨てることになった負け犬よ」
吐き捨て、女はヴァイリ目掛け駆け出す……と見せかけて転がっている死体を蹴飛ばした。
ッドン!! と凄まじい音を響かせ、球体はヴァイリに直撃する。
「なんだ。この程度か」
呆れた調子の声が聞こえた。
並みの砲撃以上の速度で蹴り飛ばされた死体の中心をヴァイリの右腕が貫き、そこを起点に内側から死体が粉砕した。
「…………ッッ!?」
視界を確保したヴァイリは目撃する。
女が一飛びで二〇メートル後方まで移動しているのを。
驚愕を張り付けたような表情でこちらを見る女の実力はただの騎士よりは高いのだろうが…………、
(ざぁんねん。騎士団長はそれ以上に決まってるだろ)
さて。
人の所有物に手を出した間抜けを殺しますか。
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