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スマートフォンを持つ手が震える。
しかし、仕方ないことなのだ。
仕事なのだから。
そうは思っていても、心配は強くなる。
その時だった。
「き、キィ……殿 ……何を……?」
アスカがスマートフォンを取りに戻ってきたのだ。
慌てて電源を切り、机に置く。
「あ、いや! えっと!」
「……見た、のですか?」
黙って伸ばされる手に、ヒッと小さな悲鳴が漏れ、身を縮める。
ゆっくり目を開けると、スマートフォンを手にしたアスカが悲しそうに見下ろしていた。
「……拙者が、手を上げるとでもお思いになりましたか? そんなことで拙者が怒るはず………いえ、結構です」
そしてクルリと踵を返すと、部屋を後にする。
その背中に向け、
「違うの! アスカ!」
と叫んだが、足を止めることはなかった。
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