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「何かあったか?」
ユズはポツリと言う。
それはゆっくりと紡がれ、そしてあらゆる感情を込められたものだとキィは分かった。
やっぱり敵わないな、そう思わされる。
聞くまでもなく自分とアスカの間に何かがあったことは分かっているのだろう。
ユズの声は暖かくキィの胸の中に染み込んで行った。
「………うん」
頷いたとき、瞳から一筋の涙が零れる。
ユズはそれに触れることはなく、キィの瞳を覗き続ける。
静かに見つめられ、心の中に入り込まれるような錯覚を覚える。
しかしそれは、何故か不快なものではなく、落ち着きを取り戻すことのできる感覚だった。
「アスカのこと、好きなんだな」
ユズが静かに笑んで見せ、キィの頭の上にポンと手を乗せる。
「うん」
キィはその一言で、堪えていた涙が溢れ出した。
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