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姫伊はバイクの後ろで柚にしがみ付きながら物思いに耽っていた。 ここまで心を許せる人は今までにいなかったし、逆もそうだろう。 数ヶ月も前には思いもよらなかった生活、そして人間関係。 自分には姉がいたこと、父親に利用されていたこと、全てを同時に取り込むには容量の大き過ぎるものばかりだった。 それがゆっくりと順応し、今では誰より家族らしく接することが出来るようになった。 血の繋がらない飛鳥でさえ家族同然だ。 今まで家族で会話をし、食事をすることがなかった姫伊にとって二人との生活は楽しさに満ち溢れるものとなっていた。 腕の力を少し強めて柚に抱きつく。 柚のヘルメットが少しだけ姫伊を向いたが、何も言わず正面に戻される。 全身で感じる柚の温もりは優しく、安心出来る。 辛いときに優しく包み込んでくれる広さ、そして力強さを感じる。 姫伊はそんな柚に、憧れに似た感情さえ抱いていた。
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