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そのとき、
「きゃッ……」
小さな悲鳴が漏れた。
柚が振り返ると、姫伊が口を押さえて青ざめた表情をして飛鳥の足を見ていた。
咄嗟に姫伊の目を手で覆い隠すと、
「何で目ぇ開けた!」
「だって飛鳥が……」
「それでも!」
周囲に目を向けると、数は減ったもののまだ大量のオーギュがこちらを向いている。
飛鳥を一瞥して、舌打ちをする。
動けば血の巡りが早くなり、その分だけ死が早く訪れる。
なるべく飛鳥を動かさずに、そして早く病院でワクチンを接種させる必要があるのだ。
「……どうすっかな」
そう考えている間にも少しずつオーギュは距離を詰めてくる。
柚は立ち上がり、振り返ることなく
「ここは私が切り抜ける。この後はアテナは使えん。一か八かだ」
姫伊はコクリと頷き飛鳥は、かたじけない、と声を漏らす。
柚が飛び出そうとしたそのとき、姫伊が叫び声をあげる。
「柚、後ろ!」
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