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海を見に行こう、と。
今井さんが言った。
「ほら、前に年越しで行ったろ。あそこの海岸だよ」
今井さんはスーツ姿の俺の手を引っ張って、駅に向かう。
「で、でも俺そんな海行く格好じゃ…」
「似合うって」
俺の言葉を一蹴りして、今井さんはどんどん駅に近付いていく。
俺は諦めて、今井さんに従った。
乗り継いで乗り継いで辿り着いたのは、何年か前に見たあの海岸だった。
潮の香りがし、冬だというのに空気が澄んで綺麗で眩しくて。
「…引田。」
海に見とれてた俺は、今井さんの声ではっとした。
今井さんは真っ直ぐ俺を見ていて、何かを言いたそうに口を告ぐんだ。
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