かがみ

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―― ―――― ――――――  事は唐突だった。夏。強い日差しが照りつける中、聳える山の麓に、男たちが屯している。 「なんか騒がしいな。どうした」 「ああ、なんか金が出たとか」 「金? 鉱山だったってことか」 「だろうな。爺さんがこれは金だっつってんだから間違いねえ」 「ああ、昔鉱山で鉱夫やってたって言ってたな」 「まあ、そんなことはどうでもいい。工事の中断命令が出た。一先ず撤収だな」 「お、じゃあ俺たちゃ休みか」 「んなわけねーだろ!」  がやがやと騒がしい空気の中、トンネルへ吹きこむ風が、まだ舗装されていないトンネル内に低い音を響かせる。男たちは一度撤収するために、トンネル内に向かう。その時だった。突然、轟音と振動、爆風が男たちを襲う。そして、それにともなう斜面崩壊。多くの作業員が土に飲まれた。  残された作業員の証言と、現場分析の結果は、今では余り使われることの無くなったダイナマイトの誤爆が、ただでさえ弱い、手入れのされなくなった人工林の土壌流出を招いた、というものだった。  警察が押収した金は、特に引き取り手もなく、その後の行方は、誰も気にとめなかった。 ―――――― ―――― ――
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