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「ただいまー」
綾菜は急ぎ気味に母のもとへ向かった。そして矢継ぎ早に質問する。
「ねえ、シフォンは?」
「おかえり。塩シフォンは無理だけど、それ、買ってきたよ」
そうして指さされた先にあったのは、金色の装飾が所々に目立つ鏡。綺羅びやかだが、それほどどっしりとしたものではなく、一般家庭にあってもおかしくないものだった。
「フリーマーケットで買ってきたの。町外れのお屋敷の方が出店してたから驚いたわ」
綾菜は母の話よりも鏡に興味を引かれていた。ちょうど髪を整えるのに良いくらいの大きさだろうと思った。なぜそこまで惹かれるのかは分からなかったが、どうしても欲しかった。
「これ、貰ってもいいの?」
「ええ、いいわよ」
「やった!」
綾菜は鏡を手に取ると、二階の自室へとかけて行った。部屋に入ると、真っ先に場所を勘考した。
「この辺でいいかな」
そうして鏡と向かい合う。装飾をじっくり見たり、鏡に映る自分を見つめたり、それだけで時間は過ぎていった。
それから一週間、綾菜は毎朝金の鏡を見つめた。それ以外は、普段通りの一週間が過ぎた。変化が訪れたのは、一週間が経った後のことである。
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