かがみ

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 時期は夏本番を迎えようとしていた。その時期の夜は熱く、熱帯夜になることも多い。そして今日もその、熱帯夜だった。  「ん……ぅうん……」  寝苦しいのか眠りは浅く、今にも起きてしまいそうだった。いや、正確には起きていた。付けていたはずの豆球も消えた真っ暗な部屋の中で、声にならない声をあげていた。表情も苦痛に満ちる。  (なんなの……これ……)  綾菜は動かぬ体を必死に動かそうとする。しかし、表情が変わるだけで、体は意思に従わない。体だけが眠りに就いている。不思議な感覚だった。そのうち、抵抗することを諦めた綾菜は、静かな眠りへと落ちていった。  翌朝、綾菜は起き上がると、豆球を消し、チラと鏡に目をやると、部屋を出た。昨夜の出来事を母に相談するためだ。だが、相談したところで何の解決法が見つかるわけでもなかった。  それから毎晩、金縛りの恐怖は続いた。日が経つにつれ、金縛り自体には慣れていったが、綾菜の気力の減退は、火を見るより明らかだった。  それからというもの、夏休み中の部活動を休むことが増えた。気力の減退は、体調にまで影響を及ぼしていた。  「金色鏡? あの鏡が……」  久々に出席した部活で、友人から聞かされた真実は、綾菜にとって信じがたいものだった。  「瑞希が前言ってたの。亡霊の住まう鏡だって」  「亡霊……」  友人にもっと早く相談をすれば良かったと後悔した。そして、魅了されたあの鏡に亡霊が憑いていたなど、思いもよらぬ真実に愕然としていた。
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