ふくろうの家

4/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「さっ、そろそろ送って行こうかね」 青いキズの薬をうつしかえた容器を布で包みながら、ロッドに話しかけた。 ロッドは部屋のあたたかさとココアのあたたかさで、少し眠たそうな様子だ。 「ほら、これを持って。ちゃんと明日塗るんだよ?」 布でしっかり包まれ、持ち手が作られていた。ロッドは眠たい目をこすりながら、反対の手でそれをしっかり握って、うなずいた。 「ルナもくるかい?」 サーラはルナの方を向き、話しかけた。 ルナはガタッとイスから慌てて降り、壁に立て掛けられていた小さい方のほうきを両手で握った。 「俺も行こう。女子供だけじゃ心配だからな」 と、毛づくろいをしていたふくろうが、バサバサっとさっき入ってきた隙間から飛び出していった。 「あの…サーラさん、ルナがほうきを持ってるけど、まさかほうきで飛んでいくなんてことしないよね?」 と、家の奇妙さからなにかを勘ぐったのか、ロッドが恐る恐る聞いた。 「そのまさかだよ、まぁ私たちはいわゆる魔女ってやつだからね、聞いたことくらいあるだろ?」 聞いたことあるもなにも、よく知っていた。 大人が話してくれる物語に出てくるし、たまに大人たちの会話にも出てくる。 魔女が誰々に呪いをかけた。 魔女が子供を連れ去った。 魔女が食べ物に毒を盛った。 などなど…… 悪い話ばかりだ。 まさか自分が魔女の家にいるなんて… ロッドの顔は青くなり、ガクガク震え始めた。 その様子を見ていたサーラが、やれやれといったような感じで、 「人間が知っている魔女はこんな魔女じゃないだろ?でも、私たちは魔女だ。隠すことはしない。さぁ、ほうきで家まで送るよ、大丈夫どこかにさらったりしないから」 ルナがスタスタとロッドに近づいてきた。 「空飛ぶの楽しいよ」 と、ロッドの左手をつかんで、外まで引っ張っていった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加