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「さっ、そろそろ送って行こうかね」
青いキズの薬をうつしかえた容器を布で包みながら、ロッドに話しかけた。
ロッドは部屋のあたたかさとココアのあたたかさで、少し眠たそうな様子だ。
「ほら、これを持って。ちゃんと明日塗るんだよ?」
布でしっかり包まれ、持ち手が作られていた。ロッドは眠たい目をこすりながら、反対の手でそれをしっかり握って、うなずいた。
「ルナもくるかい?」
サーラはルナの方を向き、話しかけた。
ルナはガタッとイスから慌てて降り、壁に立て掛けられていた小さい方のほうきを両手で握った。
「俺も行こう。女子供だけじゃ心配だからな」
と、毛づくろいをしていたふくろうが、バサバサっとさっき入ってきた隙間から飛び出していった。
「あの…サーラさん、ルナがほうきを持ってるけど、まさかほうきで飛んでいくなんてことしないよね?」
と、家の奇妙さからなにかを勘ぐったのか、ロッドが恐る恐る聞いた。
「そのまさかだよ、まぁ私たちはいわゆる魔女ってやつだからね、聞いたことくらいあるだろ?」
聞いたことあるもなにも、よく知っていた。
大人が話してくれる物語に出てくるし、たまに大人たちの会話にも出てくる。
魔女が誰々に呪いをかけた。
魔女が子供を連れ去った。
魔女が食べ物に毒を盛った。
などなど……
悪い話ばかりだ。
まさか自分が魔女の家にいるなんて…
ロッドの顔は青くなり、ガクガク震え始めた。
その様子を見ていたサーラが、やれやれといったような感じで、
「人間が知っている魔女はこんな魔女じゃないだろ?でも、私たちは魔女だ。隠すことはしない。さぁ、ほうきで家まで送るよ、大丈夫どこかにさらったりしないから」
ルナがスタスタとロッドに近づいてきた。
「空飛ぶの楽しいよ」
と、ロッドの左手をつかんで、外まで引っ張っていった。
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