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電話を切った私は、行動を開始する前に、一旦着替えた。
白いワンピースの上に白いコートを着ている。刺された時に真っ赤な血で染まることを連想させるために。
サンダルを履いていくことにした。肌を露出させることで、無防備であることを見せ付けるために。
『まさか、囮になるつもり!?』
この作戦を話した時、撫胸のリアクションは予想通りだった。
『あんた、馬鹿じゃないの!? 相手は素人でも殺人鬼よ!」
「ならば、私向きじゃない?」
という訳で、私は撫胸の推測に基づいた次の殺人現場に移動していた。
薄暗い路地裏で、隣に建っている店の通気孔からは、胃がムカムカするような煙や、臭いが漂っている。
「…………」
早く来いよ、殺人鬼……! 年頃の女の子がこんな所で、自ら襲われてやろうってんだからさ!
「……うぷっ! 限界だ……!」
堪らず、口元を押さえて、路地裏から飛び出した。
「ぜぇはぁ……おぇ……!」
とりあえず、換気。それから私は一度周りを見渡した。
「……来てるな」
殺気を感じる。相手は一人。私との距離は、3メートル以内といったところか。あんなので隠れてると思っているのだろうか。
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