坂和 桜花(サカワ オウカ)

3/14
前へ
/59ページ
次へ
 ……やっぱりド素人か。  こんな奴に殺された人達も浮かばれないな……。  そんな憐れみともいえる感情を含んだ溜め息を漏らしながら、私は再び路地裏に戻った。  何故私が気配を察知出来るのか、という疑問はひとまず置いといて。  果たして、撫胸の推測は間違いなかった。  自称『切り裂きジャックの孫』は、私の目の前に現れた。雨も降っていないのに、市販のレインコートを着ていて、両手にはサバイバルナイフが握られている。  表情は見えない、が、体格からして、20代前半の男性のようだ。ひょろりとモヤシのように痩せた背の高い男だ。  「……どいつもこいつも俺のことを見て悲鳴を上げるんだ。だから、こいつをチラつかせると、泣いて命乞いしてきてよぉ……」  男――自称『切り裂きジャックの孫』は、持っていたサバイバルナイフを見せ付けながら、今までの殺人を思い返しているようで、高笑いを堪えている。  「…………」  ……分かってはいたけど、胸くそ悪りぃな。  思わず手元に力が入ってしまう。そろでも恐らく、私はいつものポーカーフェイスを守っているのだろう。内心は、怒りと興奮が入り雑じっている。  「さっきから何をだま……ああ、そうか」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加