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「19世紀に現れた殺人鬼『切り裂きジャック』の如く! 俺は彼の末裔として、あの血塗られた惨劇を再び幕開ける!」
「 …………ハッ」
思わず失笑が漏れたので、すぐに右手で口元を押さえた。
「……だから、何がおかしいんだ! お前はこれからバラバラに解体されるんだぞ! 泣けよ! 怖がれよ!」
激昂した殺人鬼のサバイバルナイフが私の首筋に突き立てられ、新たな犠牲を生み出そうとした。
「がっ、ぁああああああおおあッッッ!!!?」
甲高い悲鳴が路地裏に響き渡った。勿論、甲高い悲鳴だからといって、私の上げたものではない。
証拠に、目の前で、さっきまでサバイバルナイフを握っていた殺人鬼の両腕から止めどなく赤い血が溢れていた。
懸命に血を止めようと試みているが、止血には少なくとも、あと2本腕があった方が良さそうだと思った。
「なっ、なぁ……何でぇ……!」
地面を転げ回る無様な殺人鬼が言った。涙の混じった情けない声だった。
その声は、こう私に訊いていた。
『どうして人を5人も殺した俺がこんな目に……。俺より強いなんて……』
笑わせるなよ、クソ野郎が――
地面に倒れている殺人鬼の顔面を思い切り蹴飛ばした。
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