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ち、ちくしょう……! 何を笑ってるんだ……! 私が怯えてる様子がそんなにおかしいか!
「皐月、笑わない。……こっちこそ、ごめんなさい。顔が青いけど……大丈夫?」
「……あ、はい……。大丈夫です」
ホッと安堵の息を漏らした。
良かった、良い人だ。
「君、この辺りの学生?」
口を開いたのは、さっきまで笑っていた、『皐月』と呼ばれていた美形の少年だった。
「……まあ、そうだけど、あんたらは? 季節外れだけど、東京観光?」
今は9月。どこも始業式は済んでるはずだけど……。
「いや、学校は今日は早く終わったから観光はしてきたいんだけど、生憎、今日は野暮用でね」
答えたのは、ショートカットの少女だった。
「野暮用?」
「うん。ちょっと東北の方からワープしてきた」
「…………?」
私が怪訝そうな顔をしていると、そりゃそうだとばかりに、ショートカットの少女は笑った。
ワープ? からかわれてるのかな?
「いや、気にしなくて良いわ。それよりさ……えっと……あっ、ごめん。名前を聞いていい?」
「椰子島……常夏」
イナバ サツキ
「へぇ、僕は稲葉 皐月。で、彼女が」
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