0人が本棚に入れています
本棚に追加
『そういうものよ。もしかしたら、明日私か、あんたが殺されるかもしれない』
その意見に素直には頷けなかった。言っていることは間違っていないと思う。だけど、これを認めてしまうと、何のために自分が頑張って生きてるのか分からなくなりそうだからだ。
『……ごめん』
撫胸が謝った。自分でも言い過ぎたと思ったらしい。
『話を戻すわよ。犯人の目撃情報は無い。だけど、何かの犯行声明かな? 全員の切り刻んだ死体の一部に、「切り裂きジャックの孫」だってさ』
「何よ、それ……」
思わず口元を手で押さえた。怒りの感情を抑えるためではなく、笑いを堪えるためだった。
『そんなにおかしいかな?』
撫胸の怪訝そうな声が聞こえた。それに対して、私は「いや」と否定した。
「でも、確かに、滑稽っちゃあ滑稽よね。でもね、撫胸……私が笑ってるのは、そんな常識に当てはまるようなものじゃないのよ」
『…………まさか』
病気やら性癖など、こういった状態の原因ならいくつか思い浮かぶが、一番的確なのは、血筋だろうか。
『…………』
「あーあー! 分かってるよ! 大丈夫。あんたに手間掛けさせないから」
『もう十分掛けられてるよ』
最初のコメントを投稿しよう!