怖気森 不思議(オゾケノモリ フシギ)

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  カサイド ツユ  傘井戸 梅雨。  私立四季上学園で、日本史の教師をしている。  親は既に他界していて、弟が唯一の身内だ。  野花春風。  苗字が違うのは、傘井戸が既婚者だからだが、夫と呼べる愛する男も、この世にはいなかった。  となると、苗字は戻しても良いのではないか、と思われることも多々あるが、実際は離婚をした訳ではないので、傘井戸の意思でこのままになっている。  弟の春風もそのことに対して、特に何も言わない。  そんな彼女は現在、人捜しをしていた。  「……常夏……」  椰子島常夏。  傘井戸が顧問をしている『オカルトクラブ』の部長で、クールビューティーな少女だ。  1週間前に失踪した、『オカルトクラブ』の最後の一人である。  (……前に会った時にもっと相談に乗れていれば……)  生徒には日頃から後悔しないように言っているのに、こんな時になって後悔している自分に腹が立つ。  「……どこにいるってのよ……」  実際におかしいことだらけだ。生徒が4人も失踪したのに、教師はおろか、家族すら、失踪したということ自体に気付いてない。  職員会議だって開かれても良さそうなものなのに。
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