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「いやぁ、悪いね。お客さんを待たせてしまって。
ほら、紫之宮。それがヒントだ。きちんと読んでおけ」
黒いファイルを藍瑠へ投げ渡した。
「それでーー」
玲奈は視線を彩乃へ移すと、まだ自己紹介していないことに気付く。
「私は宮樋玲奈(きゅうびれいな)と言う。
君の名前を教えてもらえるかい?」
「えっと……
氷下院彩乃と言います」
「氷下院さんか。よろしく頼むよ。
それで何か食べたい物や飲みたい物はあるかい?
紫之宮の奢りだろうから、遠慮なく注文するといい」
「ちょっ、あんま高い料理はーー」
「紫之宮は死ぬ気でそれを読みたまえ」
藍瑠の発言を一刀両断。
彼女は彩乃が黒いファイルに気を取られないように時間を稼いでいるため、厳しいことを言ったのだ。
一般人に陰陽道の情報を公開するわけにはいかない。
そのための処置である。
もちろん藍瑠も理解している。
なので一心不乱に書類に目を通し始めた。
「それより氷下院さんは何が食べたいんだい?
こう見えても料理は得意なんだ」
「それでは遠慮なくオムライスとトンカツで」
「おっ。
意外とがっつり行くね」
「奢りですので」
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