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私たちは来た時の路線を逆に辿(タド)って電車を乗り換えた。
2回目の乗り換え。
切符売り場の前。
ここから先は、果歩の家に行く私は別路線のはずだった。
…今頃果歩は私の連絡を待っている。
私は重い口を開いた。
「…果歩が…待ってると思う。帰らなきゃ。」
「…帰るの?」
「…帰らなきゃ。」
直人くんは切符売り場から少し離れた太い柱の陰に移動した。
私も彼に続いた。
「なあ、俺、まだ奈々ちゃんと話したいよ。別に…何かを期待してるわけじゃなくって…ほら、ホント久しぶりに会えたのに、このまま別れるなんて俺はヤダ。」
「…私だって…まだ話したいけど…。」
「俺だって話したい。…それでも帰る?」
「だって…果歩が…。」
心臓の音がうるさい。
私の気持ちはただ一方を向いているのに
それを言葉にすることが出来なかった。
「奈々が決められないなら俺が決める。」
…奈々…。
「…帰りたくない。」
私は携帯を取り出した。
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