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心臓の音はまだリズムを乱していた。
携帯を握る手がわずかに震えて、親友に電話を掛けるだけなのに口元が緊張していた。
…1、…2、…3回目のコールの後に果歩は出た。
『もしもし?奈々?どこ?迎え行くよ。』
今日の催(モヨオ)しを無事に終えた果歩の声は随分と軽かった。
「…うん。待ってた?…ごめんね。」
それとは逆に私の声は少し重くてわずかに他人行儀だ。
『どーしたの?』
それを果歩が電話の向こうで敏感に感じとる。
「…あのね。直人くんと…」
『あ、久しぶりの再会にまだ盛り上がってんの?』
「…うん。もう少し…話したいの。」
喉がカラカラだった。
『いいよ。私のことは気にしないで。今、花に囲まれながら一人のびのびでいい気分よ。やっぱりワインより何より缶ビールね!』
「…ごめんね。」
『なーに言ってんの。ほらほら、小坂くん待たせないで。迎えは明日の朝?あ、あんまり早いのは勘弁してよね。』
私はクスリと笑った。
「そんなことわかってる。」
『あ、やっぱり?じゃ、おやすみ奈々。』
「うん。おやすみ。…ありがと。」
携帯を耳から離す。
「…川崎、許してくれた?」
「もちろん。…親友だもん。」
「行こう。」
直人くんは私の腕を引いた。
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