177人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
ザアァァ…ッ
雨のおかげで私の独り言は聞こえてなくて、でも彼の泣き声は痛いほど響いてきた。
「…っ………あぁっ………ゆかり………ぅわあああぁ!!!!!」
彼のお腹辺りは真っ赤だった……………よく見ると手も太股の辺りも少し赤い……もしかしたらさっきの事故の被害者なのかもしれない…彼の血かもしれないけど、ゆかりって聞こえたから、…もしかしたら彼女さんが亡くなったのかも、……………ずっと抱きしめてあげてたんだろうな、あんなに血まみれで…。
聞いてはいけない、きっとこんなところ誰にも見られたくないはずだから。
…………そう思うのに。
泣き叫ぶ悲痛な声が…彼に打ちつけられている雨が…彼の涙に濡れた横顔が…この悲しみに満ちた風景が…私の思考を停止させる。
悲しいだけではなく……どことなく美しかったから。
私はしばらくその場から動ことが出来なくて、ただただ立ち尽くしていた…
彼と同じ様に…涙を流して…。
最初のコメントを投稿しよう!