第0話 私の履歴書。僕は野球と仲間に出会った

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2004年1月下旬。 2003年プロ野球は年度末を迎えている。 プロ野球の新年開幕、キャンプを前に2003年シーズンを多くのプロ野球ファンが振り返っていた。 さながら年越しそばを食べるように、大掃除をするように。 縦縞ユニフォームの快進撃、フィーバー。 最終戦までもつれた内弁慶日本シリーズ。 闇の深い、球界を代表するスラッガーのトレード。 大量破壊兵器並みの爆発力を手に入れた、史上最強打線の誕生。 プロ野球界のレジェンドを招聘して挑んだオリンピック予選。 などなどと、多くの出来事があった2003年。 「今年はこういうことかあったなぁ…」 「来シーズンはもっと面白くならないかなぁ?」 「あのチームのアノ選手が楽しみだなぁ」 などなどと……ストーブの熱風とこたつ布団に優しく包まれながら、ファンは多くの出来事を振り返り、それを肴に野球界の明るい未来を描いていたのだった。 その日は東京に珍しく大雪が降っていたという。 交通機関が麻痺し、首都の機能は完全に喪失。 交通のダイヤが道路に張ってある氷のように凍結したり、車がスリップ事故を起こしたりというレベルの生半可なものでなく、未曾有の大雪だったそうだ。 そんな状態でも人間は強い。 テレビでは、チビッ子が雪だるまを楽しそうに作っている光景が放送された。 新潟の豪雪地帯に負けず劣らずの大雪は子供たちに一生忘れられない思い出を与えた。 実に微笑ましい光景だ。 頬っぺたが緩んじゃう。 他にも、ケバいギャルが「雪ヤバーイ!マジヤバくねー!毎日降らねぇかな!」っと見るも聞くにも耐えない容姿、口調でストレートに己の感情を述べていた。 雪女のように綺麗な女の子が言ってるなら許せないことないけど…… 毎年、雪と格闘している北国の住民が聞いたら助走をつけて背面蹴りをしてきてもバチは当たらないレベルのものだった。 雪は馴染みのない人にとっては幻想的な結晶。 北国の人にとっては生活上のお荷物。 雪を媒介にして都会と地方における価値観のズレが公共の電波で流されたという。
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