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遼side
敗れた恋の忘れ方もわからないまま新しい出逢いに目を向けてみたりもするけど、笑えることにエリー曰く『遼ちゃんが選ぶ人は皆菜緒さんに似てる』らしい。
すり寄る女の子の中からでさえ、無意識に大切な女の面影を探してる。
…いや、もしかしたらそれは無意識じゃなく意識的に、かな。
そのくらい、いつまで経っても菜緒は鮮明に俺の中に残ったままで毎日のように思い浮かべた。
細くて長い指先
透き通る肌
キスする時に触れる長いマツゲ
幸せそうに上がる唇
ふわりと香る耳のうしろ…
俺しか知らない菜緒の全てが、終わらない恋にまた…火をつける。
「遼ちゃん…また菜緒さんのこと考えてる」
ブルーのカウンターに置かれたハイビスカスティーのストローを噛みながら、じーっと俺を睨むエリー。
笑いかけると
「…いいけどね///別にっ?いいけどねっ」
ってにんまりすんのを隠せずにいるのが可愛くて、素直な頭に手を伸ばした。
「あっ///わ、私に触ったら早水さんに怒られるよ!!かもよ!!」
やたらとでかい声でそうアピールするエリーの声に、キッチンから透がこっちに視線を向けた。
「…そおなの?」
「・・・え?」
「ほら怒んねぇの?早水さん」
「…なにこの巻き込み事故」
なんとなくいい雰囲気かと思ってた二人は、思う程その距離はあまり変わってないように見えて、必死なエリーをこんなふうにからかっては遊んでしまう。
「…酷い、遼ちゃんまで」
檸檬色の可愛いシュシュにぶら下がったパールがシュン…とうな垂れる。
ここに菜緒がいたら、あいつはなんて言ってエリーのことを庇うかな。
そうだな。
きっと…
「大丈夫だよ。あのお兄さんあれで満更でもないから」
とか言うのかな。
寂しくなった俺の左側に、もう…君はいないけどしがみついて諦めながら君を失っていくくらいなら、痛みとしてでも構わないから君を覚えていたかった。
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